Q.くり抜き法とはどの様な手術ですか
くり抜き法は肛門括約筋を保護する必要のある場合に用いられる手術法です。痔ろうの2次口の位置によりろう管の経路を想定する際に肛門括約筋が走っている部位を通っていると判断される場合は、肛門機能を保護するために肛門括約筋を避けてろう管を切除する為のくり抜き法が用いられます。くり抜き法について詳しく解説します。
くり抜き法の詳細
くり抜き法は主に以下の様な特性を持っています。
項目 | 状態 |
---|---|
痔ろうのタイプ | I型、II型、III型、IV型 |
2次口の位置 | 全方位 |
手術難易度 | 難しい |
麻酔のタイプ | 腰椎麻酔 |
手術時の痛み | 無し(麻酔が効くため) |
再発率 | 高い |
入院日数 | 日帰り~1週間程度 |
手術後 | 2ヶ月~3ヶ月程度で完治 |
後遺症 | 特になし |
痔ろうのタイプはI型、II型、III型で実施可能
開放切開術が使用できる痔ろうは『I型』、『II型』、『III型』、『IV型』の全てで使用されます。痔ろうのタイプは外からは判断することが出来ず、手術で肛門の奥を視認するかMRIで確認する必要があります。
手術難易度は高い
3つある痔ろう根治手術の中で最も難しい部類に入ります。肛門括約筋を最大限保護する必要が有るため、切除する部位を慎重に選択する必要が有るため難易度が高くなってしまうのです。
麻酔のタイプは腰椎麻酔
肛門は神経が集中する部分であり、部分麻酔では痛みが残る可能性があります。その為、腰下を全て麻痺させる『腰椎麻酔』を使用します。
手術時の痛みは全くなし
しっかり麻酔が効いていれば手術時の痛みは全くありません。
再発率は高い
くり抜き法では肛門括約筋を最大限保護するため、必要最低限の部分しか切除しません。この為、一部ろう管が取り残されてしまう場合があります。また、くり抜きした後のトンネルが再度化膿し、肛門周囲膿瘍になってしまう可能性があります。
入院日数は日帰り~1週間程度
麻酔が全身麻酔ではなく腰椎麻酔になる為、しびれが切れる6時間程度待てば家に帰る事ができる、いわゆる日帰り手術も可能です。手術後何日入院するかは病院によって様々ですが長くても1週間程度であることが多いようです。
手術後は2ヶ月から3ヶ月で完治
手術後、痛みは2,3日で引いてしまいます。その後は滲出液が出続け、3ヶ月程度で完治します。
後遺症
くり抜き法の場合、特に後遺症となるものはありません。
くり抜き法の流れ
くり抜き法の流れについて説明します。
1.腰椎麻酔
まず、腰椎麻酔を行い腰下の痛みを感覚を一時的に麻痺させます。腰椎麻酔の針は非常に細いので痛みはほとんどありませんので安心してくださいね。
2.ろう管確認
麻酔が聞いたことを十分確認した後、ゾンデと言われる細い金属棒で2次口から1次口に向かって突き刺していくことでろう管がどこを走っているかを確認します。内容だけ読むと非常に痛そうですが、既に麻酔がかかっているので痛みは全くありませんので安心して下さい。
3.くり抜き
ゾンデでろう管の場所が確定したらレーザーメスを使用して痔ろうを少し大きめに切除していきます。レーザーメスにより肉が焦げるので手術室には焦げ臭い匂いが立ち込めます。肛門括約筋を最大限に保護するために、手術時間は状態を確認しながら進むため、開放切開術より少し長く1時間程度かかる事が多いです。
4.自然治癒
手術によりろう管の外壁部分を図のようにくり抜きかれます。基本的に後方以外の肛門括約筋を傷つけてしまうとおならやうんちを我慢できなくなってしまうため、肛門括約筋にかかってしまいそうなろう管は一部残さざるを得ない事もあります。
手術後からすぐに『滲出液』と呼ばれる体液が分泌されます。滲出液は血管から染み出してくる体液で傷口の再生に寄与していると言われています。しかし、止めどなく出てくる為、下着や服が汚れないように生理用ナプキンを当てて吸収させることになります。滲出液は1ヶ月から2ヶ月程度分泌されます。
5.完治
2ヶ月~3ヶ月程度で繰り抜かれた部分の肉が再生し、完治となります。くり抜き法の場合、傷跡がわからないくらい綺麗に治ることが多いですが、まれに肉の再生具合により少しくぼんだ状態で完治となることも有ります。