人生で初となる痔ろう根治手術を受けるため手術室に運ばれた私。手術室に鳴り響くGLAYを聴きながらついに手術台へと移る瞬間がやってきてしまいました。私は無事に痔ろう根治手術を乗り越えることが出来るのでしょうか。
手術開始!
14:30 手術台に移る
看護士さん1「じゃあ、となりの手術台に体を起こして移動できますか~?」
私「ハイ・・・」
のそのそと体を起こし、横付けされた病室ベッドの上から、まな板、もといグリーンでしつらえられた手術台に移ります。
はじめは仰向けで寝そべります。
麻酔科の医師さん「こんにちは~、よろしくお願いしますね~」
私「あ、どうもお久しぶりです・・・」
麻酔科の医師さん「・・・・???」
麻酔科の医師さんは男性かつ、手術帽とマスクで目元しか出ていなかったため、執刀医のA先生と見間違えてトンチンカンな挨拶をしてしまったことに気づきました。
医師さん1「あ、A先生じゃないですよ~(笑)」
私「!!?」
麻酔科の医師さん「いやいや!初めてじゃないかもしれんぞ~!」
私の渾身の勘違いも笑いに変えてくださって和やかな雰囲気です。
しかし、私の脳の一部は冷静なままでこの方が麻酔科の医師さんで、次に行われる腰椎麻酔の為に来られたことを敏感に察知してしまいます。
14:35 腰椎麻酔開始
医師さん1「じゃぁ体を左に向けて寝そべってくださいね~。点滴のチューブが邪魔だと思いますがちょっと頑張ってやってみてください 」
腰椎麻酔はいわゆるシムス姿勢(背中を突き出しまるまる姿勢)に近い状態になり脊髄に直接針を打ち込み麻酔薬を注入することで下半身を麻痺させるものです。
腕には何度も注射した経験のある私ですが脊髄に針を打つのは初めてです。
実はこれが超絶恐ろしく、先程から呼吸が荒くなっています。
点滴のチューブを整理し、指に酸素計測用の装置をつけたりされていた医師さんが私の様子に気づきました。
医師さん1「大丈夫ですか?呼吸ゆ~~~~っくりしてくださいね(汗)」
私「ハ、ハイ・・・」
医師さん1「初めてですもんねぇ、怖いですよね~」
私「」(←言葉も出ない)
医師さん1「じゃぁ手を握っててくださいね。麻酔はすぐに終わりますからそれさえ終わればもう大丈夫ですよ~」
背中を消毒されている私はたいそう悲壮な顔をしているのでしょう。
医師さんが優しく手を握ってくれます。はっきり言って小学生でもここまで怖がらないかもしれません。
しかし、麻酔で気を失うのと、手術のどこで気を失ってしまうかでは意味が大きく異なります。
痛みも人一倍弱い為、腕の注射一つでも怖くてしかたがないのに、背中の骨の抜隙間を縫って脊髄に針を撃ちこむなど想像するだけで何度でも貧血になれそうな勢いです。
麻酔科の医師さん「じゃぁ、ちょっとチクっとしますけど我慢して下さいね~」
医師さん1「手はしっかり握っててくださいね~」
私「ガクガク」
いやでも背中に意識が集中してしまいます。麻酔科の医師さんの手が背中に触れ、針が刺さる感触が分かります。
思わず医師さんの手を強く握りそうになりますが、慌てて力をゆるめます。
医師さん1「あはは、強く握ってもらってても大丈夫ですよ~」
なんだか出産前のお母さんの気分ですが、実際は痔ろう手術前の男性でその差は歴然です。
そして、ついにその瞬間がやってきました。
グサッ!!!
背中に腰痛麻酔の針が突き刺さります。
医師さん1「大丈夫だからね~すぐ終わるからね~~」
ううう・・・
痛・・・・
く・・ない・・??
痛くありません!
もちろん注射が刺さっているのでチクっとした痛みはありますが腕の注射より痛くありません。痛みレベル0.5ぐらいです。
医師さん1「はい、注射もう終わりましたからね~ 」
私「あ、ありがとうございました・・・・」
医師さん1「良かったですね~もう麻酔が効いてくるのであとは痛くありませんよ~」
私「はい、ありがとうございます・・・」
体位変更、センサー取り付け
A先生「こんにちは、私さん。貧血は大丈夫そうですね」
私「あ、先生・・・無事にここまでこれました」
主治医にて執刀医のA先生が来られました。
手を握ってもらわないと麻酔すら掛けられなかったのは秘密ですが・・・。
医師さん2「じゃぁ、うつ伏せになってくださいね~。足は動かせないと思いますので手伝います。」
言われて気がついたのですが、すでに足の感覚が麻痺してきています。
医師さん達によりいろいろなセンサーが取り付けられていきます。
指には血中酸素濃度を測るセンサー、体に心拍数を測定するセンサーが取り付けられています。
部屋中に心拍数を示す「ピッピッ」という音が鳴り響きます。
平常時よりかなり早くなっています。
お尻が開放され、足を固定されます。
うつ伏せのため、顔を右側に方向けると医師さん2が顔色をうかがっています。
医師さん2「顔色も良さそうですね。バイタルも安定していますよ」
私「本当ですか。良かったです」
『バイタル』という言葉は医療用語で『生命徴候』を意味し、具体的には「意識レベル、呼吸、脈拍、血圧、体温」等による生命状態を指します。
一般人には正確には伝わらないかも知れません。その時の私もバイタルの正確な意味はスッと思い出せませんでしたが、その時の私にはすんなり受け入れられました。
医師さんはお二方とも若そうなのに外科手術を担当されてすごいなぁ~と感嘆の思いをいだきます。
執刀開始
A先生「じゃあ、ちょっと指入れてみますね~。これ痛いですか?」
私「うーん、感覚はありますね。少し痛いような気もします」
A先生「あれ?痛い?うーん、でもだいぶ効いてると思いますよ。普通だったらこれだいぶ痛いと思いますから」
・・・今、私のお尻になにが行われているのか全く知りたくありません。
A先生「えーと、痔ろう根治の手術です。方式は普通のレイオープンです。では、よろしくお願いします」
先生方「よろしくお願いします」
あ、まだ始まってなかったんですね・・・。
A先生「ゾンデある~?痔ろうの時にはね、ゾンデが欲しいんだよ~」
う、ゾンデですか・・・。
ゾンデというのはお尻に出来てしまった2次口から肛門内にある1次口までをぐさっと貫いて瘻管の位置を確認するための串です。
言葉にするだけで寒気がしてきます。
今まさに私のお尻にゾンデが使用されている様ですが、全く感覚がなく恐怖も痛さも感じられません。
そして、GLAY、もとい「グゥレェェェェイ!!!」がいつしか終了し次の曲が始まっているようです。
これは・・・
( ;゚Д゚)「Tube!!!!」
なんということでしょう。この日の有線チャンネルは「90年台のヒットチャート」的なやつらしく、曲名が分かりませんが20年前ぐらいの夏にかかっていた記憶があります。
おしりの方では先生がもくもくと執刀されています。
時折、おしりの方から
「ズバン!」
という音がして体が揺れます。
いったい何が行われているのか全く想像したくありません。
更に、「ジジジ」という音とともに焦げ臭いが立ち込めてきます。
これが噂の『レーザーメスによる人肉バーベキュー』というやつなのですね・・・。
人の体を焼いた臭いを嗅いだことはもちろん初めてですが、全く美味しそうな臭いではありません。
しかし、全てが全く視界の外で行われているので、恐怖感は全くありません。痛みレベルも0です。
アレの位置が気になる
手術中は下半身麻酔が掛けられているのでお尻は全く痛くありません。
しかし、一つだけ気になることがあります。
それは・・・
アレの位置です(;´д`)
手術中、私はうつ伏せになって手術台にピッタリと寝そべっている状態なのですが、その為、アレが押し付けられてしまって微妙に痛い様な感覚があります。
腰椎麻酔はもしかすると股間まではしっかりと聞かないのかもしれません。
しかし、医師さんに「アレの位置を直してください!」などと言えるわけもありません。
諦めてひたすら我慢します。
手術が終わる
Tubeが終わり次の曲がはじまりました。
3曲めは・・・
( ;゚Д゚)<FIELD OF VIEWの『突然』
これは曲名までバッチリわかりました!昔のポカリスエットのCMで使用されておりとても好きな曲です。
やることもなく暇なので指先に付けられた酸素濃度計を振りながらテンポを取って遊びます。
ノリノリで音楽を聞いていると、A先生がお尻の撮影会を始めていました。
そしてA先生から待ちに待った言葉が発せられます。
A先生「はい、いいでしょう」
やりました!!!ついに痔ろう根治手術が終了しました!!!( ̄∇ ̄)
医師さん1「良かったですね~!」
私「ありがとうございます!手を握っててもらわなければやばかったです(´・ω・`)」
医師さん1「え~、それはそれはお役に立ててよかったですよ!」
医師さん2「お疲れ様でした。結局安定剤も使いませんでしたよ。安定剤使うと後がしんどくなってしまうんで良かったですね」
私「え、そうだったんですか。ありがとうございます。」
安定剤はとっくに流されていると思ったのですが、全く使用されていなかったようです。
確かに心拍のピッピッという音は安定してゆっくりしたテンポを続けていたので不要と判断されたのでしょう。
かくして、血なまぐさい話を聞くだけで脳貧血を起こしてしまう極度の緊張症の私でもなんとか痔ろう根治手術を乗り越えることが出来ましたヽ(´ー`)ノ